Vincent Ferrané: Inner
フランス人フォトグラファー、ヴァンサン・フェラーネ(Vincent Ferrané)の作品集。フェラーネは、長年にわたるミューズであり妻であるアルメル(Armelle)を、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン期間中にパリの自宅のリビングで撮影。「あまり広くない」その場所で、15年以上共に暮らし2人の子供を持つヴァンサンとアルメルの親密さが凝縮されています。2人のパートナーシップは、授乳中のアルメルと子供を記録した作品集『Milky Way』(2017年)でも形になっています。
本書では、2つの身体の間のつながりに焦点を当てています。写真家と被写体であり、夫と妻である2人が、リビングルームという共有の領域を一緒に移動しながら撮影した一連のイメージは、2人が共に暮らす空間と親密な関係、ロックダウンの中での静かな日々を描き出しています。また、無為で自然な動作を人工の照明と夏の自然光が差し込む下で撮影することは、「リアリズムの概念を生み、影を開放し肌や布のドレープが生む色調に注力することで絵画的なタッチが写し出される」とフェラーネは語ります。
フェラーネは、これまでにさまざまな題材を用いながらも日常と親密さを掘り下げるという一貫した姿勢をもって制作に取り組んできました。本シリーズでは、身体と、身体が魅せる動きを読み解くことで、見る者の空間と時間の認識を捻じ曲げ、この未曾有の事態が起きている時期であるにも関わらず、時を止めイメージに永遠性を与えています。分断や隔離など多くの障壁の中で生活する現代に、フェラーネは「権力やカタルシスではなく、甘美で繊細な経験を求めるようなイメージに敏感であることを願い、自分の愛を格別なもの、儚くそして日常的なものとして見つめる」ことを促しています。
ページ: 48
サイズ: 225 × 325 mm
フォーマット: ハードカバー
刊行年: 2022
言語: 英語
出版: Art Paper Editions